FoxがRokuを220億ドルで買収、テレビ視聴の主導権はどこへ向かうのか

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FoxがRokuを220億ドルで買収、テレビ視聴の主導権はどこへ向かうのか

Foxが約220億ドルでRokuの買収を完了。1億世帯超の接点を得て、ケーブル依存から配信と広告の主役へ踏み出す。買収の狙いと業界への波及、企業が備えるべき広告戦略を読み解きます。

ニュースの概要

Fox Corporationは11月6日、動画配信の基盤を持つRokuの買収を約220億ドル規模で完了した。Rokuは、テレビにつないで使う配信機器とその操作画面を提供する会社である。これによりFoxは、Rokuを使う1億世帯超との直接の接点を手にする。スポーツやニュース、地域局の番組といった自社の番組と、Rokuのテレビ向け配信基盤を一つにまとめる方針だ。目的は、ケーブルテレビの契約者減少に左右される収益構造から抜け出すことにある。あわせて、視聴データを生かした広告の精度向上も進める。放送局が配信の入り口そのものを買い取った点で、業界にとって大きな節目となる取引だ。

引用元: Fox、Rokuを220億ドルで買収完了。ストリーミング事業を大幅強化(Reuters)

分析・見解

番組の作り手が、視聴の入り口まで握る意味

これまで放送局は、番組を作る側であって、視聴者がどの画面から番組にたどり着くかは他社に頼ってきた。Rokuの操作画面は、リモコンのボタンを押した最初の一瞬を左右する。いわば、駅前の一等地に並ぶ看板である。Foxは今回、その看板の持ち主になった。自社のスポーツ中継やニュースを最初の画面に載せやすくなるだけでなく、他社の番組を並べる条件も自分で決められる立場になる。

ケーブルの縮小を補う、広告収入という柱

米国ではケーブルテレビの契約世帯が長く減り続けている。放送局は、契約者から受け取る配信料と広告収入の両方を失いつつある。Rokuの強みは、広告つき無料配信の視聴が多いことと、どの世帯がどの番組を見たかというデータを持つことだ。従来のテレビ広告は、番組の視聴率という大まかな単位で売られてきた。これに対し、コネクテッドTV(=インターネットにつながるテレビ)の広告は、世帯の特徴に合わせて出し分けられる。同じ生放送でも、世帯ごとに違う広告を流せる。広告主が払う単価は上がりやすく、Foxにとっては収益の底上げにつながる。

他社との比較で見える、買収という選択の重さ

DisneyはHuluとESPNを自社の配信サービスに寄せ、NBCUniversalはPeacockを育ててきた。ただし、どちらも自前のサービスに視聴者を呼び込む形で、入り口は他社の機器に頼っている。Amazonが自社のFire TVで、GoogleがGoogle TVで入り口を押さえているのとは対照的だ。Foxは、自前の機器を一から作るより、すでに1億世帯超に届いている基盤を買う道を選んだ。時間を金で買った格好である。独自の視点で言えば、この買収の価値は技術より、リモコンの最初の画面という習慣を手に入れたことにある。人は一度慣れた画面をなかなか変えない。

他の配信各社が警戒する、公平性という新しい争点

一方で、懸念も残る。Rokuは、これまで多くの放送局や配信会社の番組を中立に並べる立場だった。持ち主が放送局になれば、他社の番組が見つけにくくなるのではという疑念が生まれる。実際に、機器側と番組側の交渉が決裂し、特定のアプリが一時的に外れた例は過去に何度もある。規制当局や競合が、検索結果の並び順や広告データの扱いに目を光らせる可能性は高い。Foxが中立性をどこまで保てるかが、買収の成否を分ける。

ビジネスへの影響

テレビ広告の発注は、番組単位から視聴者単位へ移る

広告を出す企業にとって、今回の買収はテレビ広告の買い方が変わる合図である。これまでは番組の視聴率を見て枠を買ってきた。今後は、Foxの番組とRokuの視聴データが結びつき、どんな世帯に何回届いたかまで見やすくなる。地方の店舗や中小企業でも、地域や関心に絞った少額の出稿がしやすくなるだろう。まずは自社の広告予算のうち、テレビや動画に使っている分を洗い出し、成果を世帯単位で測れる形に整えておきたい。

配信プラットフォームに頼る事業は、交渉力の備えが要る

番組や動画アプリを提供する側の企業は、入り口の持ち主が競合に変わるリスクを考える必要がある。契約更新時に、表示位置や手数料、データの扱いが不利に変わることもありうる。対策は三つある。一つ目は、特定の一社に視聴を集中させないこと。二つ目は、自社サイトやメール、会員アプリといった直接つながる窓口を育てること。三つ目は、契約書に表示条件の変更時の取り決めを入れておくことだ。日本でも、大手の通販や配信サービスの規約変更で事業が揺らいだ例は少なくない。他山の石としたい。

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